折角こんな可愛いテンプレがあって、気分的にもハロウィンを満喫したいかんじなので何か番外編かハロウィン関連の短編でも書こうかとか思ってますが、何かご希望があればメールフォームよりお知らせください。
「ヤだ。ぜってー厭」
至高の座に身をおく、傲慢不敵なその男は長々と身を横にしたまま傅く臣下に向かって簡潔に己の意思を表明した。
座れば雲上の心地を約束するであろうフカフカした長椅子に長々と横たわる男の容姿は正しく至貴の美貌と呼ぶに相応しい。見る者の嗜好を飛び越えて脳髄に絶美とは何たるかを知らしめるかのようなその貌は、全てのパーツに一部の狂いもない。
明らかに不遜なその性格が容貌に現れ、現在であれば虫の居所の悪さを隠そうともしていないのだが、そうであっても彼を目にする僥倖に巡り合えた者であれば皆、その美に感嘆の吐息を洩らすことしかできなかっただろう。
それほどまでにこの男は美しかった。
極上の銀糸が光の滝を思わせる髪は計算されつくしたかのような流れでその背に流され、憂いを帯びた濃紺の瞳は夜の帳よりもこ惑的な色を秘めている。シミ一つない白皙の肌はまさしく最上の白磁。美という言葉に形を与えるならばそれは間違いなく彼の形であろう。
その美の具現者たる高貴な男は、しかし口汚く言葉を続けた。
「つーか何で俺が下等生物を伴侶にしなきゃいけねーわけ?人間だろ?」
「彼のお方が人間として生を受けてしまったことは遺憾に心得ております」
「なー、始末しといて」
臣下の話に耳を貸すことなく、男は続ける。
「ラキエル、相手しろ」
男のその言葉に応じて、ゆらりと空気が震え長椅子の隣に長身の人影が現れる。男の隣にあるせいでその美貌は陰るが、それでも美しい女であった。
「お呼びいただき光栄の極みですわ」
言葉と同時に女、ラキエルは男にしなだれかかり、何のためらいもなくドレスを脱ぎ棄てると男の着衣に手を伸ばした。
臣下の前であるというにも関わらず、大胆な睦言が始まる。が、それを目の当たりにしても臣下は顔色一つ変えることはなかった。
「他の全ての命には従えますが、こればかりは貴方様の一存を入れるわけにはなりません。どうかご伴侶をお迎えにあがりください」
淡々と続けられる言葉に、男は自身の上で腰をふる女に冷めた目をやりながら答える。
「ヤっつってんだろ。お前、俺を馬鹿にしてないか?」
その眼がわずかに怒りの色に燃えた。
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