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なんか、また、短い。
平凡な人生かもしれない。
それでも十分に幸せなら、そこに悔いは残らない。

少し肌寒くなってきた10月の終わりに早季子はぶらぶらと道端を歩いていた。お世辞にも綺麗とは言えない川の両岸を覆うコンクリートの道は、このごちゃごちゃとした街になんとなくそぐう気がして早季子は多少の愛着すら感じている。
普段ならば自転車で駆け抜けるこの道だが、今日は徒歩でゆっくりと歩く。午前中は打ちつけるように激しい雨が降り注いでいたが、今ではじっとりとした湿り気を大気に含ませるのみだ。涼気の間に水分を孕んだ風は気持ちが良いといえるものではなかったが、それでも久々の徒歩であればそれも心地よいと感じてしまう。
平日の午後であればけして人通りが少なくはないこも道も、雨があがった直後のためか他の通行人は目に映る限りでは見当たらない。
雨の中通った大学では図書館にこもり卒業論文を仕上げていたが、ひどくなる頭痛に耐えかねて帰宅を選んだ。が、一人暮らしをするアパートまでの道のりを歩いているうちにその頭痛も治まっていた。
就職活動も無事に終え、後は卒業を待つのみの大学四年生なんて気ままなものだ。必須の単位はゼミを残してとり終わっており、週に一度大学に通えば良い程度なのである。では何をしているかと問われれば、その大抵がアルバイトに勤しみながら友人との旅行を繰り返すくらいである。
その一般的な大学四年生の例にもれず、早季子もアルバイトを2つ掛け持ちしていた。
現状を端的に述べるならば、アルバイトの合間に大学に通い卒論を仕上げているという事になるだろう。
見るともなしに水量の増加した川の流れに目をやる。元々綺麗な川でもないが、泥の茶色に染まった水は普段の数倍汚れきって見えた。
そんな水を見ながらですら、妙に胸の内に清々しさが漂うことを早季子は自覚していた。
しばし轟と言う川の流れに目を奪われた後、ふと何かの勘のようなものを感じて早季子は視線を戻した。が、特に何も見つけられず背後を振り向いて確認するがそこにも何もおかしなものは見受けられない。
何もなければそれに越したことはないのだから、と自身に言いながら視線を正面に戻せばそこには人がいた。
男の体格で、髪の色から日本人ではないことが容易に知れる。が、そんな事はどうでもよかった。つい数秒前までこの男は存在しなかったという事実ですら、早季子にとってもはやどうでもよい事だった。
ゆっくりとスローモーションのように、振り向いたままの姿勢で大きく瞳を見開いているであろう自身に向かって振り下ろされてくる、刀のようなものの軌跡をどうすることもできずに見つめるしかなかった。
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