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【魔王 SS 後編】

ふっと体から力を抜き、集中させた意識を解きほぐすと少年は声の元へと視線を転じた。
訓練場の入口には彼の友人が立っている。
「ユーリスか、何の用だ?」
「つれないなぁ、我が友人殿は」
にやにや、とでも形容すべき笑みを浮かべながらユーリスは彼に近づいてくる。
この時点で友人の用事とやらが大したものではない、それどころか下らないものであることが知れた。
しかし、無言のまま言葉を促す。
「今度、話題の妹君が入所するんだってな」
普段の底抜けに明るい性格のため、彼を含めて多くの人に忘れられがちではあるがユーリスは大貴族の嫡男である。少なくとも彼自身と対等に言葉をかわすことが出来る身分の。
ユーリスが彼の妹の話を聞いていたとしても不思議はない。
ここで否定した所で無意味だと悟った彼はあっさりと肯定した。
「それがどうしたんだ」
「やーっぱ気になる所じゃん。領地からほとんど出てないんだろ?」
「母上が手放さないだけだ。それで妹がどうかしたか?」
問い返した時には既にユーリスの意図が彼にも理解できていた。が、敢えて牽制の意味を込めてそう問う。
「いやさ、結構カワイイ子なんだろ。お近づきになりたいなーなんて」
口調はふざけたものだったが、大貴族の嫡男が幼くはあっても女性を紹介しろとは政治的な意味合い含まれないわけがない。
「幼児趣味があったのか?妹はまだ7歳だぞ」
「将来を見越しての発言に決まってるじゃないか」
彼自身が憂慮していた通り、彼の妹は貴族の師弟にとって格好の婚姻相手となりうるのだ。嫁下したとはいえ、現国王の実妹を主と擁く大貴族の一人娘、しかも養子ときている。
手を出しやすい、美味しい存在というわけだ。
おどけた調子のままの友人に僅かな苛立ちを感じたが、表に出すことはなく話を摩り替える。
「まずは現実をみるべきだな。この間の実技、最下位だっただろう」
「俺はお前ほど才能に溢れてないの。1年教会に籍を置いたらすぐに還俗するんだよ」
「妥当な選択じゃないか。候は早期の引退をお望みと聞いている」
そう言ってやると、表情豊かなユーリスはあからさまに口元を歪める。
「耳が早いなぁ。俺だってしばらくは放蕩息子を楽しみたいっての」
「放蕩息子に義兄と呼ばれるのはお断りだ。私はもう部屋に戻るからな」
ユーリスの言葉も待たずに、背をそむけると出口へと向かう。
「言葉の綾だよ!な、義兄さん!!」
今日の練習は予定の半分もこなせなかったと思いながら足を勧める彼に、友人の弁解など届いていなかった。
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